2006年06月13日

藤原新也 『渋谷』

藤原新也さんの、 渋谷
この本は買おうかどうか迷っていたけど、実際本屋で、その真っ白な、一種潔いぐらいのシンプルな装丁を見たらやっぱり買いたくなってしまって、購入。
「あの顔が、……自分の顔より、自分のことあらわしているように思えたから」

p16

 藤原さんの元に届いた、写真展用の応募用紙の顔の所にマンガの顔を貼り付けて、その用紙を送った少女のことば。
この気持ち、わかる。わかるなんておこがましい言葉はもう使う意味すらわからなくなっているけれども、今でも思うときは良くある。

 問題は、何故そう思ってしまうのか、だと思う。自分の顔というものは、すべからくしてコミュニケーションの手段というか、他人に見せる名刺というか、様々な役割を果たしているものだけれども、何故、そう思ってしまうのだろう。自分の顔の持つ意味を自分で把握できていないということなのだろうか。

 他にも、本の内容そのものは、少女…今や少女と言っても、どんな少女を想像するのかすらバラバラだけど、その「少女」について書かれている。
私は、「乳の海」と違って、若い男性が主人公となっているのではなく、女性、しかも今の日本の女の子という割と身近な人たちが題材にされているということでいたく興味をひかれてしまったのかもしれない。
 私はギャル系の女の子たちはちょっと苦手なのだけれど、でもそういう子たちにも一人一人顔があって、様々な背景があって、ああなっているんだ、ということが改めてわかった。そして、わかってしまったらなにか余計に辛かった。
 どっちかというと今まで、表面だけはいい子をしていた私は、ギャル系の子のことを、喋りとかマナーなんて関係ないよとばかりに動物みたいにふるまう彼女らを、そのうるさい喋り方もあってバカにしていたほうだったけど、ギャル系の子も、社会が定義するダメな子像に自分をはめこむので必死、というくだりを読んでいたら、私が思っていたギャル像の小ささと、現れる姿はどうであれ根本的には同じ、というところが何かすごく虚しかったというか、やるせなくなってきた。

 本を買った後に、古本屋に行った友人を待ちながら、ビルとビルの間にある隙間階段で本を開く。文中にちょうどビルの隙間から見た空の話が載っていて、ああ、まさに今、このことだな と思った。
ギャルの女の子が見た、藤原さんが見た、ビルの隙間にある階段から見える細くて狭い空。
 それは都会では当たり前のことだ。私も偶然同じように、そうやって上を向いて空を眺めていると、 空が、なんか窮屈そうだなぁ と思った。ほんとうに窮屈だったのは自分だったのかもしれないけれど。

 本は0,1,2,3と4章で構成されていて、私は冒頭からグイっとひきこまれてしまって、読もうと思えばすぐに読めてしまうほどの量だったけれど、なぜかゆっくりゆっくりと、でもページを早くめくりたくて仕方がなく、その両者の間でせめぎあいながら読了した。

 3章では母親と娘の関係について書かれていた。そのほかにも、本のページのそこかしこに何年か前の自分の事を思い出してしまいそうな事がたくさん書いてあって、辛かった。まるで自分のことが書かれているようで、泣きそうなのになぜか涙は直前で止まってしまって、出ない。

 わたしが思うに、母と娘は相似形なのかもしれない。自分の姉も、結婚したら母にそっくりになったなぁと思うときがよくある。
口調や、叱り方が、そっくり。 妙に自信ありげな所もそっくり。
母は結婚したらそうなってしまうものだ、とは言っていたけど…。

 家族ってわからない、特に、母親ってわかるようでわからない。わかったような気になっているだけかも。でも、家族って、もっとも近いところにいるけど、完全な理解なんてないんだな、と思うと、すごく言葉にできない「なにか」がこみあげてくる、この本はそんな「なにか」が詰まった本。私は好きだ。
posted by 鉄1 at 01:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書/Books | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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