2006年09月18日

黒い喪服

高校生の頃、とても大好きな絵があった。

その絵は、はたから見ると、果たして絵と呼んでもいいのか、わからないぐらいに不気味な色合いで、人物を描く線は漫画じみていて、フツウに取り出して他人に見せるにはあまりにも歪で、怖い絵だった。

でも、そんな不気味な絵でも、自分の宝物だった。間違いなく。

今から思うと…その絵に描かれていた人物は、おそらく自分だったのだろうと思う。
檻の前に力なくもたれて、半開きにされた口は何かを言い出したいのに言い出せない言葉がつっかえているかのようだ。

背景は暗く、重い。描かれた人物が着ていた服は、まるで喪服のような黒。暗い、内蔵じみた鈍い赤色と、すべてを飲み込む真っ黒な色だけで、その絵は着色されていた。


今はもう手元にはないはずなのに、私はその絵のことをよく覚えている。手に取るように思い出せるのに何故かはっきりしないけど、よく覚えている。
その絵はもう、本当にどこにも残っていない。
パソコンのハードディスクの中にも、ファイルの中にも、本の中にも、どこにもない。


なぜ手元にないのかと言うと、私は、その絵を「葬った」からだ。

もういらないんだ。そう決めたから…全部捨てた。今の私にはこれは必要ないのだ、と…。
いや、そんな思いを説明しようと思っても、それは現在の私が過去の私を推量してものを言っているだけで、当時の私にはそのような思いはなかったのかもしれない。
ただ、もう、この絵と一緒にいてはダメだと思った。
だから、決めた。もう、いらないんだって。今までずっと一緒にいてくれてありがとう、って。自分の身の一部がなくなるようだったけど、全部捨てた。


ひょっとしたら、自分は変わりたかったのかもしれない。
そうまでしないと変われない、と気がついたからこそ、その絵と「決別」したのかもしれない。


絵に描かれていた人物が着ていたのは、喪服のような黒いブラウスとズボンだった。
ひょっとすると、それは葬られようとしている自分自身だったのだろうか。
自分は、変わらなくてはいけないと思っていた。
どうすればいいのかわからなかった。
でも、自分の奥底にいる、自分自身と呼ぶべきものは、今の私が何を必要としているのか、何を求めているのか、そしてどうしたいのか、全てわかっていたのかもしれない。
自分が変わるためには、それまで生きてきた自分を壊し、否定しなくてはならないことがある。
時にそれを、「死」と呼ぶことがある。

死者を弔うときに着るのは喪服。
上も下も、真っ黒な、喪服を着ていた人物を自分になぞらえていた自分は、あのとき確かに、何かに絶望し、落胆し、退廃的に、投げやりであっただろう。

あのとき私は確かに転機を迎えていた。
同時にそれ相応の不安も抱えていた。
未来に希望は見えなかった。
支えすら見失って、ただ力なく、檻の前でもたれているしかなかった。

ただ、どこかでそのままでいられないのはわかっていたから・・・。

だから、空想の中で私は私自身を葬っていたのだと思う。真っ黒な服を着ながら。
たとえそれが単なる空想や夢想の類であろうとも、あの頃の自分にその絵が果たした役割は、本当に大きなものだった。
ただひとつの、本当の意味での支えと呼んでも良かったと思う。



今、現在私が好きな絵、支えとしている人物画は、あの頃とは違うけど、ちゃんとある。

一つは、人物が横を向いている。けれど、両足はちゃんと地面を踏みしめていて、廃墟の中に立っているのに、とても強靭で、強そうだ。
二つ目は、人物がしっかりと背筋を伸ばし、前を向いて歩いている。
三つ目、私が一番好きなその絵に描かれている人物は、正面切って、しっかりとした顔をして、笑っている。

posted by 鉄1 at 14:05| Comment(0) | TrackBack(0) | MYSELF | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

自分の感性の融和、そして日本に関して思うこと。

やっぱり、自分の感性というか、思考って、見事にモードというか、役割分担がキッパリ分かれているように思う。More…
posted by 鉄1 at 00:28| Comment(1) | TrackBack(0) | Daily Dialy | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月17日

恋愛の妙味。

ブラジリアン・ガールと不器用な俺の物語 さんのブログの 恋愛・国際結婚 のカテゴリが、最近ほんとに面白いです。

More…
posted by 鉄1 at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 人間関係/恋愛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

社会の世相についてのおぼえがきと自戒

時に、「これは死ぬまで絶対手放さないだろうな」と、思うような本がある。More…
posted by 鉄1 at 20:51| Comment(0) | TrackBack(1) | Daily Dialy | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。